この記事では、サッシ図の見方を基礎からやさしく解説しています。記事に沿っていけば、初心者でもサッシ図の内容を精査・チェックが出来るようになります。
こんな方におすすめの記事です。
- はじめてサッシ図をチェックする設計者
- 若手の現場監督、施工図関連業務の方
- サッシ屋の1年生 など
サッシ図とは
「サッシ図」とはサッシを作るための図面です。アルミニウム製建具(アルミサッシ)や樹脂製建具(樹脂サッシ)などの施工図の略称で、サッシ施工図、サッシ製作図とも呼ばれます。一般的に建具工事(サッシ工事)業者が作図をします。
その目的は、大きく以下2点です
- サッシを製作するための詳細(寸法や各部品や材料の詳細)を示すこと
- サッシ周辺の建築との取合や工事区分を示すこと
「施工図」とは、建築図面の一種。主に建築設計段階から、建築物を実際に建設する際に使用されます。実際の寸法や詳細(各部品や材料、寸法、配置、仕上げなど)が示された図面です。
サッシ図の見方、チェック方法
本記事では、非住宅物件で最も採用の多いアルミサッシ引違い窓のRC抱き納まりをベースにしています。てサッシ図を見る時に、何をチェックするのかという目線で解説します。
アルミサッシの一般的な特徴はこちらの記事をどうぞ
【解説】サッシの材質の特徴比較|アルミ、樹脂、複合、鋼製、ステンレス、木製 はこちら
解説した内容は、すべて「一般的」な内容です。文章には「一般的には」が省略されていると考えてください。
仕様書・建具キープラン・建具数量表
表紙と仕様書
「表紙」や「仕様書」には物件全体に共通する項目が記載されます。一般的な内容も多い為、全てチェックする必要はありません。
記載内容とチェックの必要性は以下の通りです。
記載内容 | チェックの必要性 | 備考 |
---|---|---|
工事名称など物件情報 | 要 | 記載ミスの可能性がある |
建具の性能 | 要 | 金物欄の項目で詳しく解説 |
準拠する仕様 | 要 | JIS、JASS、公共工事標準仕様、社内仕様書であれば特に問題ない |
表面処理(カラー) | 要 | 金物欄の項目で詳しく解説 |
使用材料 | 不要 | ※不要だが、現場塗装のスチール製品がある場合は錆止めの種類をチェック |
製作、施工誤差など | 不要 | JASSなどに準じているため |
部品などの材質 | 不要 | ほとんど制定品で変更できない |
製作期間 | 要 | |
養生や搬入条件 | 要 |
建具キープラン・建具数量表
「建具キープラン」は「建具配置図」とも呼ばれ、建具の配置を示す案内図です。基本的には平面図に建具符号をプロットし作成しますが、複雑な建物では立面配置図も作成することがあります。
「建具数量表」は各フロアごとの建具数量の一覧表です。「建具表」や「建具リスト」「建具一覧表」とも呼ばれます。
この2つの図面と、サッシの各窓番の詳細図の数量に相違が無いか整合性をチェックをします。
姿図・平面図・矩計図
姿図は内観図で表記されます。建築図の建具表は外観で作図されることもあるため、平面図や立面図も含め整合チェックが必要です。
平面図は上:外部、下:内部です。逆にカーテンウォールは姿図:外観、上:内部、下:外部です。
尺度はS=1/10~1/50程度、サッシ大きさに合わせて調整します。
一般サッシは「内観図」カーテンウォールは「外観図」。
SDは丁番が見える側の姿図とする場合が多いが、制作業者によるため注意。
建築図との整合、左右勝手に注意!
姿図でチェックする寸法など
姿図では、以下の項目をすべてチェックします
- サッシ製品のW(幅)H(高さ)
- 平面図で寄りと出入り(通り芯からの距離)
- サッシ取付高さ、腰高(FLからの距離)
- クレセントなど操作部品の高さ(排煙窓なら要注意)
- アンカーピッチ
- 有効面積チェック。引残しと有効開口寸法、ガラリなら有効開口率
- ガラス厚(金物欄にも記載されるため、後項で解説)
- 網戸の有無(金物欄にも記載されるため、後項で解説)
- 開き勝手(引違い窓にはありません)
補足4.)サッシの腰高が高く、操作部品の高さを極力下げたいケースがあります。サッシの種類により、設置できる高さの範囲が決まっており、サッシ下端から200ぐらいが限界の商品が多いです。仮に腰高1500だと操作高さが1700になってしまうため、注意が必要です。
また、開き窓だと操作ハンドルの更に上に、ロック解除部品などが付く場合もあり確認が必要です。
補足5.)アンカーピッチは公共工事標準で500ピッチ以下と定められています。しかし実際は、アンカーを現場で取付る際の施工誤差や、サッシの強度の問題で、メーカーが各自に400や450など標準を定めています。500以下であれば問題ないでしょう。配置は本図のように中央450で両端を端数とするか、全体を325で均等割するかはどちらでも良いので、サッシ業者標準でOKです。
補足6.)引違い窓は引残しがあり完全には開き切らないので、有効開口はサッシ面積の1/2とはなりません。また開き窓もサッシのWHが有効開口では無いため注意してください。
【Q&A】窓やガラリの有効開口率ってどうやって計算するの? はこちら(現在整備中)
補足その他)方立や無目がある場合は、姿図で位置や割付をチェックしてください
方立と無目が分からない方はこちらの記事をどうぞ 【解説】方立と無目の基本|標準納まりのポイント
姿図は重要な寸法のみが記載されているため、全ての寸法を建築図と整合チェック
窓種
窓には多くの種類がありますが、一般的な窓種は以下の通りです。
- スライディング系窓
引違い窓、片引き窓、上げ下げ窓 など - プロジェクト系窓
・FIX窓
・スイング系窓(縦すべり出し窓、外倒し窓)など
・ルーバー系窓(ガラリ、ガラスルーバー、オーニング) - ドア系
丁番ドア、ピポットヒンジドア、折れ戸
窓種のカテゴリーや名称はメーカーにより多少異なります。ここでは一番わかりやすい三協っぽい表記にしています。YKKAPはドア系もプロジェクト系窓に含まれています。フロアヒンジはフロントサッシのみにラインナップされるメーカーもあるので記載していません。
窓種で製作範囲がかなり異なります。サイズが大きく製作できない場合は、寸法を小さくしたり、窓種を変更する必要があります。その時にこちらの記事を参考にしてください。
【完全保存版】窓種(開閉形式)38種類を解説|特徴と技術情報 はこちら
【Q&A】カタログの見方が分かりません。製作範囲ってどう見るの? はこちら(現在整備中)
【Q&A】カタログの範囲外のサッシは作れないの?オーダー対応できる場合は? はこちら(現在整備中)
メーカーでラインナップや製作範囲が違うので、出来ない窓種をどうするかが重要
金物欄
建具符号
「建具符号」は窓の名称で、「窓符号」「窓番」も同義です。
「AW」はアルミウインドウの略で、アルミ製の窓を表します。
建具符号は建築図と一致しているかを確認します。
サッシ、ドア関連よく使われる代表的な建具符号です
- AW:アルミ製窓
- SW:スチール製窓
- PW:樹脂製窓
- AG:アルミ製ガラリ
- SG:スチール製ガラリ
- AD:アルミ製ドア
- SD:スチール製ドア
- PD:樹脂製ドア
- SSD:ステンレス製ドア
- ACW:アルミ製カーテンウォール
建具符号は建築図と一致しているかを確認すればOK
数量・取付場所
数量と取付場所をチェックします。
取付場所が異なっても製品が同じなら同一窓番となります。ですので建築図の符号分けがサッシ図で、まとめられることがあります。
サッシ図のキープラン(建具配置図)や建具数量表と見合わせながらチェック
サッシの基本性能
施工図では下記5性能を明記します。特に、1、2、3はサッシの3性能と呼ばれている重要な性能です。
ほかにも、サッシやドアに求められる性能は防犯性や耐衝撃性などありますが(等級が無いため)施工図に記載はしていません。
- 耐風圧性能:
S-1(800Pa)~S-7(3600Pa)の7段階でJISに規定、どの程度風に耐えられるかを示す性能
設計図に特に記載が無い場合はS-5と判断。部材のサイズやコストに大きく影響。 - 水密性能:
W-1(100Pa)~W-5(500Pa)の5段階でJISに規定、雨水の浸入を防ぐ性能
サッシの一般的な性能はW-5です。ガラリなどは性能なし。 - 気密性能:
A-1~A-4の4段階でJISに規定、空気の漏れを防ぐ性能
サッシの一般的な性能はA-4。ガラリなどは性能なし。 - 遮音性能:
T-1~T-4の4段階でJISに規定、音を防ぐ性能
設計図に記載が無い場合は不要と判断するが、多くのサッシがT-1かT-2の性能を有す。ガラス厚にも影響。 - 断熱性能:
H-1~H-6の6段階でJISに規定、窓から伝わる熱を防ぐ性能
設計図に記載が無い場合は不要と判断。ガラスも変わるためコスト影響大。
【解説】サッシの性能についてくわしく解説 はこちら(整備中)
サッシの表面処理(カラー)
アルミサッシで一般的に使用される仕上は下記4種類
- 陽極酸化塗装複合皮膜(陽極酸化複合皮膜)
最も一般的で、街中でよく見るサッシは大体これ。カラーはシルバー、シャイングレー(ステンカラー)、ブラウン、ブラック、ホワイト、グレー。それぞれのカラーに濃淡や艶の有無があり全部で10種類を超えるバリエーション。アルミ質感(ヘアライン)が残る処理。ヘアラインを消す場合はマット処理なども可能。サッシ業者が提示する標準のカラー以外はコストと納期に影響する場合があるので注意が必要です。
性能はJISでA1、A2、B、Cの4段階で規定され、一般的にはB種を選択。 - 陽極酸化皮膜(アルマイト)
別名の「アルマイト」は「陽極酸化複合塗装皮膜」と混同されている。現在、サッシの表面処理として採用されることはほぼなし。部品など見え隠れ部分での採用は未だにある。 - ふっ素樹脂焼付塗装
自由に色を選択したい場合に採用。アルマイトより高価で、納期がかかるため注意。 - アクリル樹脂焼付塗装
ふっ素より安価だが耐候性に劣り、雨掛かりでは使用不可。また陽極酸化複合皮膜よりは高価で、納期がかかる。
【Q&A】アルマイトって何?サッシの表面処理について詳しく解説 はこちら(整備中)
カラーの選択は、意匠だけでなく納期とコストに影響。早めの決定を
製品名
非住宅(RC造、S造)で使用される製品は「ビル用サッシ」と呼ばれます。木造用は「住宅用サッシ」と呼ばれます。
ビル用サッシは大きくは以下のように分けられます。
- 標準サッシ(一般サッシ)
- 高性能サッシ、高意匠サッシ(一般サッシ)
- フロントサッシ
- 改修サッシ(一般サッシ)
- 防火サッシ(一般サッシ)
【Q&A】標準サッシと高意匠サッシの違い、隠し框とは? はこちら(整備中)
【解説】フロントサッシとは?設計のポイントと一般サッシとの違い はこちら
【Q&A】改修サッシ?カバー工法って何?窓の交換について解説 はこちら(整備中)
「標準サッシ」はいわゆる普通のサッシ、設計図に指示が無ければ選ばれるメーカーの最も安価な基幹商品です。三協「MTG-70R」、LIXIL「PRO-SE70」、YKKAP「EXIMA31」です。
「一般サッシ」とはフロントサッシやカーテンウォール以外のサッシ、高意匠サッシ、改修サッシ、防火サッシも含めた総称です。
【Q&A】各メーカーの商品体系(それぞれの類似品比較表)はこちら(整備中)
【Q&A】ビル用サッシと住宅用サッシの違い。木造以外に住宅用サッシは使えるの? はこちら(整備中)
公共建築工事標準仕様は「引違い・片引き・上げ下げ窓で複層ガラスの場合、枠の見込100mm 」と記載があるが、今は70見込でも複層ガラスが納まる製品がほとんど
ガラス
ガラスの表記
ガラスは、姿図や金物欄に記載があります。設計図やガラス業者の見積と整合を確認します。
一般的によく使われる記号はこちらです。
- PG:ペアガラス
- FL:フロートガラス(磨き)
- PWC(PW):網入り磨きガラス
- FW:網入り型ガラス
- TP(TやTGとも):強化ガラス
- HS:倍強度ガラス
- F :型板ガラス
- SG:すりガラス
- Low-E(LE):Low-Eガラス
- SRG:熱線反射ガラス
建具工事外のガラスフィルムなどは記載しません。
サッシ図は姿図が内観のため、室内側から表記するのが一般的
「Low-E5+A12+FL5」は「室内側:Low-E5mm 空気層:12mm 外部側:FLガラス5mm」の意味
ガラスの種類のくわしい解説はこちらの記事をどうぞ 【解説】窓ガラス全16種類|特徴と選び方
グレイジング方法
ガラスを固定する方法です。特にこだわりが無い場合は、基本的にシールを選択します。
アルミ樹脂複合サッシや、樹脂サッシなどサッシの種類によって、ビード対応のみの製品もありますし、逆にビードの設定が無い製品もあります。
「グレイジングチャンネル」「グレイジングビード」「ガスケット」も「ビード」一応と同義と考えてOKです。
基本どちらでも良いが、柱前などシール打設不可の部位はビードになってるかは必ずチェック
サイズと重量
サイズの大きな引違い窓、ドアや排煙窓の操作が重くトラブルになる事があります。操作性が重要なサッシのガラスは遮音性など性能に問題が無い範囲で可能な限り薄くしてください。建築図の厚みをそのまま採用せず、ガラス業者に強度を確認します。
例)引違い窓W=2200H=2400、ガラスFL6+A12+FL6の場合ガラス+障子で約85KGでかなり重いです
JISで開く時の力50N以下と規定されていますが、実際50Nだとかなり重く感じます。子供や高齢の方が操作する窓であれば、ガラスの重量が重い場合は、蹴り出しアーム付の引手を付ける対応をした方がよいです。また強化ガラスに変更し厚みを下げることも効果的です。
【Q&A】ガラス厚ってどうやって出すの?重量は簡単に手計算できるってホント? はこちら(整備中)
【Q&A】サッシのトラブルよくある事例10選。事前に防ぐ対策も解説 はこちら(整備中)
あまりに重いサッシは職人さんの調整だけじゃ、どうにもならない
網戸
網戸の有無、網戸の種類、ネットの種類は、建築図の建具表や特記との整合を確認します。
注意が必要なのは、下段が引違い窓、上段が排煙窓のようなケースです。建具表の表現があいまいな場合に、サッシ業者が下段の網戸のみしか見積していない事があります。上段の排煙窓は換気で使用するかは確認が必要です。
網戸について詳しくはこちらをどうぞ 【解説】網戸の種類|全8種類の設計ポイントと応用事例紹介
アルミサッシの防火設備
延焼のおそれのある部分に設置される防火設備。アルミサッシに防火性能が求められる場合は、大臣認定を受けた防火サッシ製品が採用されます。アルミサッシ、アルミ樹脂複合サッシ、樹脂サッシは20分間の遮炎時間をもつ製品しかありません。60分の性能が必要な場合は鋼製建具となります。
非防火のサッシとの違い特徴は大きく3つです。
- コストが高い
- 製作範囲の制限が厳しい。サッシの構成では見付が太くなる
- ガラスが網入りガラスもしくは耐熱強化ガラス
2019年に個別認定が始まり、製作制限が厳しく当初はトラブルも多発しました。現在はかなり商品ラインナップも増えましたが、非防火サッシに比べメーカーでの製作可否の差が大きいため、早い段階での確認をおすすめします。出来ない場合は意匠変更が必須となります。
【Q&A】アルミサッシの個別認定、通則認定って何?鋼製建具の仕様規定との違いは? はこちら(整備中)
部品欄
部品欄は、部品の中でも変更や選択が可能な部品が記載されます。逆に、引違い窓であれば、「戸車」や障子位置決めの「固定ブロック」などは変更が出来ないので記載されません。
例)クレセントなど操作部品 → ロック付きやカギ付き、持ち手の長さ違いなど選択が可
例)結露排水弁 → 付ける付けないの選択が可。地域性もあるが基本は、建具表の記載に準じる
例)引手 → 引違い窓の框が、形材引手(手を掛ける凹凸がある)なら、引手は無しでも可。また、掃き出し窓なら大型のハンドルも選択可
また、部品色の記載が無い場合はメーカーで指定色になるので、もし部品色にこだわるならサッシ業者に確認。
部品欄はチェックしなくても良いが、ドアハンドルや引手は品番の決定が必須(但し、未決でもサッシは発注可能)
断面詳細図
サッシの部材・部品など名称
基本的な名称の一覧です。
※地域や人によって呼び方が異なるものもあります
※本詳細図は簡略化のため、網戸を省略しております。
各部位のそれぞれの解説はこちらの記事をどうぞ 【解説】窓・ドア用語集 |部品・部材名などを詳しく解説 はこちら
納まりチェック項目
ここではRC抱き納まりに限らず、どんな納まりでも共通の事項について解説をします。
RC抱き納まり以外にもS造など各納まりのポイント解説はこちらをどうぞ
【納まり事例集】サッシRC納まり|標準図のポイントと応用
【納まり事例集】サッシECP納まり|標準図のポイント
【納まり事例集】サッシS造サイディング納まり|標準図のポイント
各所寸法や納まり
取付位置
壁芯とサッシ芯とのズレ寸法25mmをチェックします。「サッシ芯」は通常、枠見込70mmの中心35mmの位置ですが、製品によっては中心ではない場合もあります。
カーテンウォールは外面を基点とし、芯寸法は押さえません。
SDなどの鋼製建具はサッシ芯は記載しないのが通例です。
額縁のチリ
「額縁のチリ」は枠と額縁の間の段差の事で、縦横は15mm、下0mmが標準。標準チリでならサッシ枠と木額アングルが一体となった一体枠を使用します。その場合チリを変更するとコストに影響する可能性があります。
隠し框の高意匠サッシでは、スッキリと見せるためチリを小さくすることが多いです。ですがチリを0とすると微妙な施工誤差が目立つため注意が必要です。チリを5mm程度とするか、逆にチリを付ける納まりが採用されることもあります。
また、鉄骨枠納まりなどでチリが変更できない場合もあります。
簡単に変更出来て、内観の印象がけっこう変わる寸法
枠の寸法、框の見付、形材の形状
RC抱き納まりでは、RC枠と呼ばれる最も安価なタイプの枠が使用されます。アルミサッシ、樹脂サッシなどは形状の自由がきく鋼製建具とは違い、枠形状は変更できないのでチェックをする必要はありません。
見付を細くしたい、スッキリ見せたい時は、チリなど変更可能な納まりを調整、水切など付属部材を変更、製品自体を変更するしかありません。
ただし、框や方立は耐風圧やWHにより必要な強度が変わるため、見付と見込のサイズが複数あります。サイズは強度表から自動的に決まるのでチェック不要です。見付を細くしたい場合に、小さい形材に補強を入れてイレギュラーな対応をする場合があります。コストや納まり含めてサッシ業者と調整します。
【納まり事例集】補強材を入れて、サッシを細く見せる方法 はこちら(調整中)
【解説】サッシ枠形状一覧|RC枠、ALC枠、同面枠、鉄骨枠の使い分け はこちら
【Q&A】カタログに無い部材もあるの?型を起こすって何。そもそも形材とは はこちら(整備中)
形材は難しい、種類も多く、何を変えられるか変えられないか良くわからない。補足記事で勉強をどうぞ
ガラス溝幅、ガラス開口
ガラス総厚が24mmですので、ガラスシール目地が最低5mmでガラス溝幅34mm以上あることを確認してください。
水切出幅、伸ばし寸法
水切と躯体のチリが10mm~15mm程度となっていることを確認してください。W方向の伸ばし寸法で、躯体のヌスミ寸法を決定してください。
詳細はこちらの記事をお読みください 【納まり事例集】サッシRC納まり|標準図のポイントと応用
躯体とのクリア、ヌスミ寸法
躯体開口とサッシ枠の間の寸法を「クリア」(クリアランス)と表現します。「逃げ寸法」も同義です。
クリアは溶接が出来る寸法から決まっており、各メーカーで標準寸法があります。柱との取合など、クリアが取れない場合はサッシ業者と要相談です。あまりにクリアが小さい時はアンカーをオーダー形状にするなどの対応をします。
クリア寸法から躯体のヌスミ形状が決まります。RC抱き納まりで注意するのは、水切が躯体に飲み込む箇所のヌスミ形状です。
サッシの結露対策
サッシ枠周りが適切に断熱されているかを確認します。サッシ自体が結露する場合、結露排水弁を設置するなど結露水の処理は適切かを確認します。必要な場合にはサッシの製品本体に結露対策が施す場合も有ります。
【納まり事例集】サッシの結露対策方法5選 はこちら(整備中)
サッシの結露は施工後にできる対策は少ない。図面の段階でしっかり対策を
天井や床、壁との取合
サッシ図に反映が必要な場合は、サッシ以外の情報もチェックします。サッシ工事外の細かな内容を反映させすぎると訂正の期間と製作納期にも影響するため注意してください。
付属部材
額縁
額縁の種類は大きく4つに分けられます。
- 木額縁・・・サッシ枠と同材の木額固定用アングルが付く。下枠は結露受け形状も選択可能
- アルミ額縁(形材)・・・材質はサッシと同じ、出幅が小さい時に使用。メーカーの既製品
- アルミ額縁(曲物)・・・出幅が約200mmを超えた時に使用。形材よりコストが大きくUP
- St額縁(曲物)・・・補修しやすいメリットあり。塗装は建具工事外が基本だが、工場塗装も可
寸法と材質チェック以外で、下記の内容も検討してください
- アングルや額縁のビスは、止水に問題が無い箇所に固定してある
- 出幅が大きな額縁では適切に中間でも溶接固定されているか
- 木額固定用ビスは、斜めに打たれると見た目が悪いため、目立たなくする目的で半丸を採用の場合もあり
- 結露対策で額縁に断熱材を挟む必要はないか
1~4のより詳細な解説はこちらの記事をどうぞ
【解説】付属部材の詳細、完全ガイド|額縁、水切、見切、ブラインドボックス はこちら(整備中)
水切
水切はメーカーの既製品形材となるため、出幅のバリエーションは大体10mm刻みで決まっています。躯体とのチリが10mm~15mmになるように水切を選定します。出幅が大きい(200mmを超える)場合は曲物となり形状は自由に変更可能となりますが、コストはアップします。
【Q&A】曲物って何?形材との違いは?採用時の注意点、製作制限などを解説 はこちら(整備中)
工事区分の確認
工事区分について確認をします。
工事区分は、物件ごとに契約を確認する必要がありますが、ここでは一般的な内容を解説します。また契約書や図面に記載の無い暗黙知のような内容に触れておきます。また、大前提として大工が取り付ける住宅用サッシと違い、施工までサッシ工事で行うのが特徴です。
サッシ図はサッシ業者が作図をしますので、サッシ工事範囲外は(別途工事)や(別途)の記載があります。ゼネコンによっては(別途工事)という表現はNGとし(建築工事)と記載する会社もあります。ただ、手書きの設計図や建築施工図とは違い、サッシ図は半自動化されたシステムで作図するため、システムの設定で(別途工事)と表記されるのが一般的です。
詳細図に何も注記が無いものはサッシ工事ですが、躯体やガラスのように、明らかに建具工事外のものにも(別途工事)の記載はありません。
工事範囲が不明なもので、姿図や詳細図に記載が無ければ、サッシ図の仕様書か見積書の記載を確認します。
シーリング材
- サッシ枠と躯体の取合:別途工事(防水工事)
- サッシ枠とガラスの取合:別途工事(ガラス工事)
- サッシ枠と水切の取合:サッシ工事(サッシ工事手配のシール業者が現場打設)シール色を指示してください
【解説】サッシのシーリング材|種類・選び方のポイント はこちら
枠の固定方法
サッシ枠に取りつけたアンカーと躯体に埋め込んだアンカー(アヒルアンカー)の間を鉄筋棒で溶接し固定します。
- サッシ枠側のアンカー:サッシ工事
- 埋込アンカー:別途工事
- 鉄筋棒:サッシ工事。地域によっては、鉄筋棒は現場支給、取付はサッシ工事
サッシ枠のアンカーも、躯体のアンカーもどちらも「サッシアンカー」と呼ぶことがあります。
サッシ埋め、サッシ込み(モルタルやロックウールなど)
サッシ枠と躯体の間を埋めるモルタル充填は別途工事(左官工事)です。「トロ詰め」も同義です。RCの場合はモルタルですが、S造の場合は不要だったり、ロックウールが必要だったりしますのでサッシ図に明記されていることを確認してください。
【Q&A】サッシ埋め(サッシ枠まわり)は何を詰める?モルタル?RW?ウレタン? はこちら(整備中)
ガラス
ガラスは別途工事(ガラス工事)の事が多いですが、確認は必要です。ガラスとサッシ枠間のシーリング材も別途工事(ガラス工事)です。特に注意が必要なのは、工場組み込みの強化ガラスドアなどがある場合です。特殊なサッシなら注記の確認を必ず行ってください。
【解説】窓ガラス納まりと注意点 はこちら(整備中)
木額固定用ビス(サッシビス)
ビスはサッシ業者支給の場合と、別途工事の場合があります。取付は木額縁施工業者です。
※サッシビスは俗語なので地域により、指すものが異なるようです。テクスミリねじや、D6特皿ビスを指したりします。
躯体、断熱材、内装ボード
明らかに建具工事外のものは注記はありませんが、標準納まり以外の特殊な納まり、他業種との取合が複雑な時には、しっかりとサッシ図に注記を追加して記載をしてください。
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【納まり事例集】漏水に注意したい納まり集、チェックポイントも解説(整備中)
コメント
いつもありとうございます。
記事を読んでいただきありがとうございます!何かの参考になれば幸いです
北海道でサッシ事業をしています。
自分も設計・施工図・現場管理をしていますが、
勉強になります!!
スタッフ含め改めて勉強させてもらいます!
うれしいコメントありがとうございます。サッシ業者様のお役に立てる記事を今後も増やしていきます
こういった資料がずっと欲しいと思っていたので、
とてもありがたいです。
教えてくれる方がなかなかおらず、
現場ではかなり苦労しながら施工図の作図とチェックを行っていたので、あの時の自分に渡してあげたいです。
後輩達にも勧めようと思います。
ありがとうございます。
お忙しい中ご丁寧なコメントを頂き、またサイトをご紹介いただけるとのこと感謝致します。これからも若手の方の役に立つ情報を増やして行きます
窓ハンドブック拝見させていただきました。
たぬきさんの知識と企画力、構成力、行動力に感動しております。
社内でも参考資料として広めさせていただきます。
カーテンウォールまで手を伸ばす予定があったら嬉しいです^ ^
社内で広めて頂けるとのこと、大変うれしく思います。アルミ→フロント→鋼製建具→CWの予定で考えております!