この記事では、方立と無目について基礎からやさしく解説しています。バリエーションが最も多いビル用のアルミサッシとスチールサッシを比較しながら解説をします。この記事の考え方を理解すれば、アルミサッシ以外も理解できます。
こんな方におすすめの記事です。
- はじめてサッシ図をチェックする設計者
- 若手の現場監督、施工図関連業務の方
- サッシ屋の1年生 など
※メーカーによって形状が異なりますので、詳細はカタログをご確認ください。
方立とは
連窓で単窓同士をつなぐ柱のことです。窓やドアの枠を支える役割を持つため、WやH寸法が大きくなると、より強度が必要なので、方立のサイズが大きくなります。材質はサッシ本体と同じですが、スチールの補強材を内部に入れて強度を確保する場合もあります。
サッシの納まり図の見方や用語に不安がある方は、先にこちらの記事をお読みください
【完全保存版】サッシ図の基本|見方・読み方徹底解説
方立の種類 一覧
大きく6種類に分けて解説をしていきます
- アルミサッシ(一般サッシ)RC枠方立
- アルミサッシ(一般サッシ)ALC枠方立
- アルミサッシ(一般サッシ)同面枠方立
- アルミサッシ(一般サッシ)鉄骨枠方立
- アルミサッシ(フロントサッシ)方立
- スチールサッシ
比較表で見て分かるように、と見付や形状が異なります。それぞれの詳細解説します。
図の水色は「縦枠」ピンクは「方立連結材」です。「縦枠」2本と「方立連結材」と化粧カバーをまとめて「方立」と呼びます。
枠形状のことが分からない方はこちらの記事をどうぞ
【解説】サッシ枠形状一覧|RC枠、ALC枠、同面枠、鉄骨枠の使い分け
各方立の詳細図の特徴を解説
アルミサッシ/一般サッシ RC枠
基本のRC抱き納まりです。
図面の一番右、抱き納まりでは躯体と枠の取り合いで、縦枠の外部見付面にシール打設されます。この考え方が方立にも踏襲されます。真ん中の方立は、ピンクの方立連結材と縦枠の外部見付面シールが打たれて止水が完結します。現場での作業を少なくするためガスケットを使う製品も多いです。
左は高強度方立で、強度が高くなるほど外部に方立連結材が大きく飛び出します。
化粧カバーは形材のはめ合いでパッチンと取付てビスは使用しません。
見付70mm。抱き納まりで使う想定なので、方立は外部側に飛び出す
RC納まり解説はこちらの記事をどうぞ 【納まり事例集】サッシRC納まり|標準図のポイントと応用
アルミサッシ/一般サッシ ALC枠
ALC納まりの基本図です。
ALC方立はRC方立とほぼ同じ構成となります。サッシはALC外面より10mm室内側にセットバックしているため、方立が少し(本図では13mm)外部に飛び出しても問題ありません。
ALC枠はRC枠より外部見付が大きい分方立見付が大きくなります。
ALC方立には高強度タイプがありませんが、理由はRC方立のように外部に出るとALCより飛び出し納まり的に問題がある事、そもそもALC納まりでWHの大きな大開口の窓の需要があまり無いためです。
見付100mmだがRC方立70mmを使う事もできる。高強度方立はない。
アルミサッシ/一般サッシ 同面枠(面一枠、フラット枠、面付枠)
基本の同面納まりです。
図面の一番右、躯体と枠の取り合いは縦枠側面にシール打設されます。この納まりが方立にも踏襲され縦枠間に正面シールが打たれて止水が完結します。
同面納まりなので、ピンクの方立連結材は外部に露出せず、室内側に飛び出ます。左の方立は、高強度方立で強度が高くなるほど、室内側の見込みが大きくなります。サイズはメーカーにより種類があります。
化粧カバーは形材のはめ合いでパッチンと付くのでビスはありません。
外部に正面シールがあるのは同面枠。見込みは室内側に大きくなる。方立はダブルシールがベター(本図はシングル)
RC同面納まり解説はこちらの記事をどうぞ 【納まり事例集】サッシRC納まり|標準図のポイントと応用
アルミサッシ/一般サッシ 鉄骨枠、半外枠、半外付け枠
基本の軽量鉄骨ビス止め、サイディング納まりです。
図面の一番右、鉄骨胴縁に枠ヒレのビス止めの上に、透湿防水シートと外壁が施工されます。方立も同じ考えで、ヒレ部分とピンクの方立連結材が気密され、外部に出ている部分はシールやガスケットはありません。
※これはメーカーによる
見付は100mm、高強度方立なし、方立上にL=100程度の水切材が付き、意匠性が低い
サイディング納まり解説はこちらの記事をどうぞ 【納まり事例集】サッシS造サイディング納まり|標準図のポイント
アルミサッシ/フロントサッシ
フロントサッシは「割方立」と呼ばれ、形材のはめあいで構成される方立です。1Fのエントランスで使われるため、水密性能が低く一般サッシのように大きなガスケットがありません。
また、本図面はRC枠ですが、枠形状によらず方立形状は同じです。
左の高強度方立は、室内側に見込みが大きくなります。
水密性が低く、意匠性が高い。基本見付は60mm。単板ガラスなら見付は更に細い(35~50mm)。H=6000まで想定されるので、方立見込200mm~260mmの高強度タイプもある。
フロントサッシについてはこちらの記事をどうぞ 【解説】フロントサッシとは?|設計のポイント、一般サッシとの違い
スチールサッシ
スチールサッシの現場連結の方立です。スチールサッシは曲物で自由度が高いですが、よくあるタイプの納まりの詳細図です。
アルミサッシのように納まりによるバリエーションは無く、縦枠同士を連結しジョイント部にシールを打設します。室内の場合には、ここに角パイプなどの目板を詰めることが多いです。
曲物が分からない方はこちらをどうぞ【解説】曲げ加工って何?曲物の設計のポイント
無目とは
段窓で設置される横材のことを指します。「段窓無目」とも呼ばれます。無目があることで、ガラス一枚が小さくなり構造的に安定しH寸法の高いプロポーションを実現できます。
基本的に、枠形状で無目の違いはありません。
無目の種類 一覧
重ね無目/上下連結無目/分割無目(一般サッシ)
上図は下段:引違い窓 上段:FIX窓 の無目です
このタイプはあまり使われませんが、無目の構造を理解するには一番分かりやすいです。引違い窓の上枠とFIX窓の下枠を角パイプで連結してビス止めし、外部にはシール打設、内部は化粧カバーを被せます。単体のサッシを上下重ねて連結するので「重ね無目」と呼ばれます。
実際は、一体無目が存在しない場合にのみ使用するので、珍しい窓種を組み合わせる時に使います。写真のように、ガラスブロックと排煙窓の段窓など。外部のシール目地が特徴です。
無目/一般無目/一体無目(一般サッシ)
下段:引違い窓 上段:FIX窓 の無目です
「重ね無目」の改良版、上位互換です。よく使われる窓種の組み合わせでは、上枠と下枠が一体化した無目が製品化されています。見付は100mm、このタイプが一番多いです。
見付小タイプ無目(一般サッシ)
下段:引違い窓 上段:FIX窓 の無目です
上の項目と同じ一体無目ですが、見付が小さいタイプです。本図面では70mmですが商品により、50mm~80mm程度です。通常の100mm見付より強度が低く、あまり使用されません。
サッシ業者は、見付小タイプで強度が持つ場合でも、標準の100mmで作図をします。設計者の方は、サッシ図に「無目サイズダウンできますか?」と一応チェック入れてみるのもいいでしょう。
フロントサッシの無目
下段:FIX窓 上段:FIX窓 の段窓無目です
フロントサッシの無目も一般サッシと考え方は同じです。ただ、フロントサッシは要求される意匠のバリエーションが多いため、見付サイズの種類が多く、40mm~250mm程度と幅広いです。200mmの無目は自動ドア無目と連窓されるFIX窓で、見付を合わせる時に使います。
スチールサッシの無目
下段:開きドア 上段:FIX窓 の無目です
フロントサッシの無目も一般サッシと考え方は同じです。曲物なので自由な形状で製作出来るため、一体無目で製作します。標準的な内観見付は70~100mm程度です(本図面では80mm)
段窓サッシの縦枠の構成
無目のあるサッシでは、縦枠は上から下まで通しで入ります(縦枠勝ち、無目が負け)。
左図は下段の引違い窓の縦枠(水色)が下から上まで通ります。上段はFIXですので、FIX窓用アタッチメント(ピンク)が欄間のみに付きます。
右の図面のSDも同様で、開きドアの縦枠(水色)が下から上まで通ります。上段FIXのアタッチメント材(ピンク)が欄間のみに付きます。
重ね無目の場合は、単窓を段積みしますので、この縦枠構成にはなりません
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