この記事では、窓(サッシ)の材質による種類の違いとそれぞれの特徴を解説しています。窓は空間を作る要素で、コストにも大きく影響を及ぼします。また、メンテナンスのポイントやデザインのヒントもお届けします。
こんな方におすすめの記事です
- 窓を選ぶ前に、一般的な知識・教養としてそれぞれの特徴を把握したい方
- それぞれの窓のおおまかな特徴を比較したい方
目次
サッシの材質 比較表
まずは特徴を簡単に比較します。あくまで、イメージですが、比較の条件は以下の点となります。
- 特殊なオーダーサッシは除く、標準的な窓で比較
- 非住宅用(ビル用)のサッシで比較
- 木製サッシは非住宅では採用が少ないためあくまで参考程度。( )で記載
アルミ製 | アルミ樹脂複合 | 樹脂製 | 鋼製 | ステンレス製 | (木製) | |
---|---|---|---|---|---|---|
耐候性 | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | ◎ | ○ |
強度 | ◎ | ○ | △ | ◎ | ◎ | △ |
デザイン バリエーション | ◎ | △ | △ | 〇 | ◎ | ◎ |
断熱性・結露 | × | ○ | ◎ | △ | △ | ◎ |
施工性 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | 〇 | △ |
コスト | ◎ | ○ | △ | △ | × | × |
水密・気密 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | △ | △ |
防火性能 | ○ | △ | △ | ◎ | ◎ | ○ |
自由度 | 〇 | △ | × | ◎ | ◎ | ◎ |
サッシの種類の特徴を把握できて、実際のサッシの図面の見方を知りたい方はこちらの記事をどうぞ
→【完全保存版】サッシ図の基本|見方・読み方徹底解説
サッシの種類 特徴と選択基準
アルミニウム製建具(アルミサッシ)の特徴
- 軽量かつ高強度
アルミは鉄の1/3の重量で非常に軽量かつ、高い強度を持つため大型の窓やドアが製作可能です。 - 耐久性、耐候性が高い
アルミは腐食や錆びが起こりにくく、雨風や紫外線劣化に強く、屋外で長期間にわたっての使用に適します。メンテナンスも年に数回の軽い水ぶき程度で済みます。 - デザインの自由度が高い
加工しやすいため、細いフレームや複雑な形状のデザインの製品が多く商品化されています。 - 断熱性が低い
金属の中でも特に熱を通しやすく、断熱性が低いのが欠点です。ペアガラスなどを使用する事で断熱性はある程度向上しますが、サッシ自体の結露を防ぐことは難しいです。商品の種類は少ないですが、枠の中間に断熱樹脂が挟まれているアルミ断熱サッシもあります。これはアルミ樹脂複合とは違います。 - 普及率とコストの低さ
1950年~60年代にアルミサッシの量産が始まり日本で一気に普及したため、現在でも普及率、窓種の豊富さやコストの低さで他の窓には大きく優っています。
アルミ樹脂複合建具(複合サッシ)の特徴
- 高い耐久性
外部がアルミで内部が樹脂(通常はPVC)の化粧材を組み合わせた構造です。外部側はアルミサッシ同様の高い耐久性・耐候性を有します。また、樹脂も耐候性の高いPVC製ですので総合的にメンテナンスが少なくて済みます。樹脂のメンテナンスは、水や中性洗剤で軽く拭き取る程度です。 - 優れた断熱性、環境への配慮
樹脂の断熱性が高いため、アルミサッシよりも大きく断熱性能が向上します。断熱性の向上で、エネルギー効率の改善にも寄与します。ただし樹脂サッシよりは劣ります。 - 製作サイズの大きさ
サッシの骨格となる材料はアルミニウムですので、樹脂サッシと比較すると大きな窓やドアを製作することが可能です。 - 多彩なデザインと色
アルミサッシや樹脂サッシでは内外単一カラーとなります。アルミ樹脂複合サッシでは、内外のカラーが変えられますので、多彩なデザインが選択できます。室内を木調樹脂とすれば外観はシャープなアルミ色、室内は温かみのあるデザインにすることもできます。 - コストの低さ
非住宅用サッシ(ビル用サッシ)では、やっとここ10年ぐらいで商品バリエーションが増えてきて普及し始めた印象です。ただ、住宅用サッシではそのかなり前からアルミ樹脂複合は多かったので、メーカーに量産ノウハウもあり、コストは比較的低いです。
樹脂製建具(樹脂サッシ)の特徴
- 断熱性に優れている
樹脂は断熱性が非常に高く、枠の結露を防ぎます。また、樹脂サッシを選ぶ理由のほとんどが「断熱性」のため、ガラスも断熱性の高いトリプルガラスなどが使用できる仕様となっており、総合的に高い断熱性を持ちます。採用する事で室内の快適性を向上させ、冷暖房効率の向上に貢献しエネルギーコストを節約できます。 - 軽量というわけではない
樹脂は軽量ですが、強度が低いです。非住宅用サッシのようにサイズが大きいと内部に鉄などの補強材が多く入るため、逆にアルミサッシより重いこともあります。 - 耐久性が高い
樹脂サッシは錆びたり腐食する心配がないため、湿気の多い場所や塩害の強い地域でも長期間使用できます。 - バリエーションの少なさ、ザイン性が低い
住宅サッシは樹脂サッシの商品は多いですが、アルミサッシに比べると窓種がかなり少ないです。また、非住宅用サッシ(ビル用サッシ)についてはそもそも商品の種類が少ないです。そのため、特に寒冷地だと木造用住宅用サッシを加工して非住宅に使っている事例をよく目にします。また、アルミに比べ強度が低いため枠や障子の見付、見込が太くなる傾向にあります。 - コストが高い
今後、普及してくるとこは確実ですが、現在は普及率が低い事もありコストは高いです
鋼製建具(スチールサッシ)の特徴
スチールドアの仕様や納まりについてくわしくはこちら【完全保存版】SD(スチールドア)の基礎知識
- 強度と耐久性、セキュリティが高い
鉄は非常に強固で耐久性があります。その特徴から鋼製建具は高い強度を持ち、外部からの侵入に対しセキュリティ面で優れています。集合住宅だと玄関ドアは鋼製建具が多いです。 - 防火性が高く、断熱性は低い
鉄は耐火性が高く、火災の際に炎に耐えることができます。アルミ製や樹脂製では20分耐火商品しかありませんが、鋼製建具は60分耐火性能を持つ製品(特定防火設備)を製作できます。また、同じ20分耐火の防火設備であれば、鋼製建具の方がコストが低い場合も有ります。また断熱性はアルミよりは若干高いですが、金属ですので高くはありません。 - メンテナンスが比較的容易
アルミは、独特の光沢感とヘアラインと呼ばれる流れるような模様があるため、傷の補修が難しいです。しかし、鋼製建具の表面処理は塗装ですので、塗替えができるのがメリットです。 - 多様な用途に対応できる自由度
アルミサッシの枠は形材と呼ばれ、形状が商品によって決まっています。しかし鋼製建具は曲物と呼ばれ、鉄板を自由な形状に曲げて製作します。その堅牢性と形状加工の自由度から、アルミサッシや樹脂サッシで製作出来ない、巨大なドアや、大きな窓、警察署や拘置所の特殊な窓まで様々な用途で使われます。 - コストが低い
一般的なサイズの建具では、アルミサッシよりは価格は高く、ステンレス製建具よりはコストは安いです。
ステンレス製建具(ステンレスサッシ)の特徴
- 耐食性と耐久性
ステンレスは錆びにくく、湿気や化学薬品への耐性も高いです。また強度が高く、衝撃や摩擦に対しても優れた耐久性を発揮します。 - デザイン性とバリエーション
ステンレスは光沢のある仕上げが可能で、高級感や清潔感を兼ね備えています。また、鋼製建具同様にステンレス板の曲物で製作されるため形状の自由度が高いです。そのため洗練されたデザインが実現でき、さまざまな建築で採用されます。 - メンテナンス性
ステンレスは汚れが付きにくく、掃除が簡単です。日常のメンテナンスが少なくて済むため、常に美しい状態を保つことができます。特に衛生面が重視される場所ではその利点が際立ちます。 - 防火性が高く、断熱性が低い
鋼製建具同様、特定防火設備、複合防火設備を製作することができます。そのため、エントランスなどでアルミサッシで出来ない意匠を、ステンレスサッシで代用する事例も多いです。材料の断熱性はアルミ、鉄よりは優れていますが、それでも樹脂よりは遥かに低いです。 - コスト
他の材料に比べてコストは高めです。表面処理の方法が多数あり、コストもかなり幅があります。
木製建具の特徴
- 自然な美しさ
木製建具は天然素材ならではの木目や質感が魅力で、暖かみのある雰囲気を演出します。そのため、インテリアに自然な魅力を与え、居心地の良い空間を作り出します。 - 優れた断熱性と環境への配慮
木材は樹脂よりも断熱性が高く、室内の快適性が増し、エネルギーコストの節約が可能です。また、木材は再生可能な資源であり、二酸化炭素の吸収や排出量の低減が期待されるため、環境にやさしい建材と言えます。 - 自由度の高さと加工の容易さ
木製建具は加工がしやすく、様々な形状やデザインに対応可能です。カスタマイズ性が高く、最適なスタイルに仕上げることができます。個々のニーズやデザインに柔軟に対応できます。 - 修復の容易さ
木製建具は、傷や汚れが付いた場合でも研磨や塗装などのメンテナンスが比較的簡単です。そのため、長期間使用することが可能です。 - コスト
木製建具の価格は使用する木材の種類や加工方法によって異なります。一般的に、高品質な木材を使用すると初期費用が高くなりますが、長期的にはその美しさや耐久性からコストパフォーマンスが高いと評価されることが多いです。
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