この記事では、はじめてSDを扱う方向けにイラストや図面付きでわかりやすく基礎知識を解説しています。SDで使う代表的な部品名称、施工図の見方、扉の種類、枠の種類など最低限知っておきたい情報をまとめました。
SD(スチールドア)とは?
SD(スチールドア)、SD扉、鋼製建具とは?
スチールドアとは、主にスチール鋼板の曲物で製作されたドア、鉄扉のこと。また、スチール製の窓「SW」とスチールドア「SD」を合わせて「鋼製建具」と呼びます。
曲物が分からない方はこちら【解説】曲げ加工って何?曲物の設計のポイント
SDの特徴
スチールドアの特徴と、アルミドアではなくスチールドアを選択する理由は以下です
- 防犯性、耐衝撃性、耐久性:スチールのため高強度
- 防火性:アルミ製建具では製作出来ない形状ができる。特定防火設備、複合防火設備ができる
- デザインの多様性:曲物なので自由度が高い。塗装のため色が自由
- 製作範囲:かなり巨大な扉も製作できる
- メンテナンス性:塗装なので塗り直しが比較的容易
- コスト:ステンレス製と比べ安価。アルミ製建具とのコスト差は製品による
SDの部材・部品の名称
両開きスチールドアの部材・部品の名称
両開きスチールドアの主な部品・部材の名称です
各部材・部品の解説はこちらをどうぞ 建具(窓・ドア)用語集・用語解説
- ドアクローザー(ドアチェック)
- 順位調整器
- フランス落とし
- 丁番
- レバーハンドル/ピボットヒンジ
- 錠前
- 沓摺
- デッドボルト
- ラッチボルト
- フロント
- ケース
- サムターン、シリンダー、空錠
- ストライク
- トロよけ
常時開放式防火戸、片面フラッシュ点検口の部材・部品の名称
常開防火戸と点検口の主な部品・部材の名称です
各部材・部品の解説はこちらをどうぞ 建具(窓・ドア)用語集・用語解説
- オートヒンジ
- トップピボット
- ケースハンドル
- レリーズ(建具工事範囲外)、レリーズ裏板(扉内)
- 潜り戸
- 面付け丁番(外部から見えない)
- 平面ハンドル
- ワイヤーストッパー
- 片面フラッシュ扉
SD図(SD施工図)の見方・読み方
片開きフラッシュスチールドアの姿図です。姿図は丁番が見える側を作図するのが一般的です。ドアW・H、扉のDW・DHを押さえます。またハンドル高さとアンカーピッチを記載します。平面では、通り芯からの位置と錠前の種類を記載(サ:サムターン、シ:シリンダー、空:空錠)。AWでは矩計図を作図しますが、SD図では作図しません。また、ドアクローザーがパラレルタイプかスタンダードタイプか分かるように取付位置を記載します。
金物欄は主に「建具符号」「数量」「取付場所」「塗装の種類」「金物」「防火設備の有無」を記載します。
両ヒバタSAT枠のスチールドアのRC造同面納まりの詳細図です。平面では丁番が見える側が下、断面では左で作図されます。AWは枠見込みの中心をサッシ芯とし基準にしますが、SD図はサッシ芯という考え方はありません。
納まりは枠裏に設置したアンカーをRC壁に鉄筋棒で溶接しモルタル充填で固定をします。下枠(SUS沓摺)はモルタル埋めが難しいため、取付前にモルタルを充填しておきます。雨がかりの場合は左図のように上枠にSUSもしくはSt水切を追加します。
構成材料、表面処理
スチール曲物の板厚は枠が1.6mm、扉が1.2mmを通常使用します。
材料は一般的に溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G 3302)が使用されます。塗装工事で現場塗装する場合は、建具工事で錆止めを工場で塗装します。錆止めは、塗装に合わせた錆止めを選択する必要があります。また、焼付塗装とする場合は、建具工事で工場塗装となります。
またメーカーの規格品や玄関ドアなどの扉は化粧鋼板を使用します。色はメーカー制定色となります。ただし枠は化粧鋼板を使用できませんので、現場塗装もしくは焼付塗装となります。
枠の種類・形状
気密性での分類(ST枠・SAT枠・PAT枠)
- ST枠(一般枠、標準枠):気密性、水密性の必要ない箇所で使用
- SAT枠(セミエアタイト):枠に四方のAT材(エアタイトゴム)を回す形状。最も一般的
- PAT枠(パーフェクトエアタイト):枠にはAT材、扉にはSUSエッジ材、ハンドルはグレモンハンドルを使用。また防音ドアの場合は扉にグラスウールを充填
片ヒバタ、両ヒバタ
- 片ヒバタは「V枠」や「Z枠」とも呼ばれる戸当たりと額縁が一体の枠。段差が無いためすっきりした印象。ただし、デメリットとして上枠が天井と取り合う場合などに、内外の仕上げ位置が違うため調整が必要
- 両ヒバタは「W枠」とも呼ばれる標準的な枠形状。片ヒバタと比べると戸当り部分が15mm出るため、意匠性で劣る。ただし逆に、枠との取り合いは内装の仕上げ位置が内外で揃うため納まりが良くなる
スチールドアの種類、開閉形式(窓種)
主なスチールドアの種類
フラッシュドア
最も一般的に使用されるスチールドアのタイプ。フラッシュ扉は内部のスチールの力骨と表面材で構成されています。小窓や切窓、ガラリを設置する事も出来ます。
框ドア(ガラスドア)
スチール製の框にガラスを入れる構成の扉。ガラス入りの扉でも防火設備とすることも可能です。
集合住宅玄関ドア、ホテルドア
アパートやマンションの玄関ドアやホテルの各居室のドアもSDです。特徴は扉は化粧鋼板のフラッシュ扉で、扉の中の芯材はハニカムコアと呼ばれるもので軽くて丈夫です。また部品も特徴的で「ドアスコープ(ドアアイ)」や「ドアガード」「ポスト」「換気口」などが設置されます。木造戸建て住宅の玄関ドアは一般的にアルミ製が採用されています。
常時開放式防火戸(随時閉鎖式防火戸)
通常は開放状態ですが、火災を感知すると自動的に閉鎖される防火ドアです。建築基準法により、火災拡大防止と避難の安全確保のために設置が義務付けられています。主に「熱感知器」や「煙感知器」が煙や炎を感知し電気信号でドアが閉まります。「熱感知器」「煙感知器」「レリーズ」は建具工事外、レリーズを取り付けるための「レリーズ裏板」は建具工事です。また、避難路に設置される防火ドアが3㎡を超える場合、潜り戸が必要です。
点検口扉・メーターボックス用扉
点検口やメーターボックス用扉(ガスチャンバー)は、裏側(設備スペース側)は通常見えないため、片面フラッシュ扉で製作する場合が多いです。丁番は「面付け丁番」で外部から見えないように裏側に取付、開き止めは「ワイヤーストッパー」、持ち手は「平面ハンドル」が標準的な仕様です。防火設備となる場合、自閉装置が必要なため「点検口用ヒンジ」などを取り付けます。
防音ドア
枠は「PAT枠」、ハンドルは「グレモンハンドル」の締まり機構のあるドアで、要求性能によって扉と枠内にグラスウールを充填します。
開閉形式(窓種)
スチールドアの開閉形式は主に以下の種類に分類されます
- 開きドア
丁番ドア
ピボットヒンジドア
フロアヒンジドア - 折りたたみ戸(折れ戸)
- 自動ドア(シングルスライド・ダブルスライド)
- 引戸(下置きレールタイプ)
- ハンガードア
詳しい解説はこちら【解説】ドアの全10種類を解説|特徴と設計のポイント
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