この記事では、サッシの額縁(窓額縁、窓枠)の種類と設計のポイントを施工事例や詳細図付きでわかりやすく解説します。
サッシ額縁とは?窓枠とは?
サッシ額縁・窓額縁・窓枠
窓、ドアの室内側の枠周りに取付けられ、壁との仕上げを調整する見切材。右図のように額縁は4方(もしくは3方)組立後にサッシ枠に取付ます。
出幅(見込寸法)はサッシと壁の位置から決まりますが、見付は大抵25mmとなります。木造住宅で使用する既製品では20mmや21mmなどが多く使用されます。
以下はどれも「サッシの額縁」の同義語です。
「額縁」「サッシ額縁」「窓額縁」「窓枠」「建具枠」
また似た用語の「膳板」「窓台」は下枠に取りつける額縁。下額縁のことです
本記事の注意点
本記事の解説はあくまで一般的な内容です。特に寸法などは製作会社によりますので、詳細は各社カタログをご確認ください
納まり詳細図面の見方が分からない方は先にこちらの記事をどうぞ
【完全保存版】サッシ図の基本|見方・読み方徹底解説
額縁の材質と選び方
木製額縁(木額縁、木額)
額縁で最も多い材質が「木」です。図はアルミサッシの平面詳細図です。ビル用サッシでは内法からチリ15mmで取付が標準的です。住宅用サッシは一体枠のためチリ0mmの製品が多いです。見付は25mmが標準的。
取付はサッシ枠に付けたアングル(アングルピース)に木ビス止めで固定します。木ビスは通常皿ビスを使用しますが、仕上がりを重視し頭が半丸のタイプを使用する会社もあります。また、アングルの材質はアルミサッシではアルミ、樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシでは樹脂となります。
工事範囲はアングルはサッシ工事、木額縁はサッシ工事範囲外となります。住宅用サッシの場合は、サッシメーカーで既製品の額縁もサッシとセットで手配もできます。固定する木ビス(サッシビスとも呼ぶ)はサッシ業者手配か、サッシ工事範囲外かは地域によります。
スチール額縁(鋼製、St額縁)
額縁の上に物をよく置く場所などはスチールを選択します。鋼製のため強度が高く、表面処理は塗装で塗り直し補修が比較的容易です。サッシ枠の形状によってはチリ15mm取れない場合もあり、本納まり図は5mmです。見付は25mmが標準的。また写真のように、曲物額縁は縦勝ちで、上下額縁の出幅を2mm~3mm小さく製作します。
曲物がわからない方はこちら【解説】曲げ加工って何?曲物の設計のポイント
取付はサッシ枠に付けた下地アングルに皿ビス止めします。額縁がサッシ枠に接する面は10mmぐらい曲げ返すことで綺麗に仕上がります、さらに室内側で躯体と鉄筋棒で溶接で固定をします。溶接のために額縁の裏には600mmピッチ程度でアンカーを取り付けます。出幅が約400mmを超えると下額縁を強固に固定するために、溶接用の鉄骨下地などが必要となります。
工事範囲は一般的に、サッシ工事もしくは金属工事です。金属工事で手配する方が安いです、が数量が少なければサッシ工事でまとめた方が工事費含め安くなる傾向にあります。通常、錆止めまではサッシ工事で塗装は現場で塗装工事で施工します。サッシ工事とする場合は工場でアクリルもしくはウレタン焼付塗装となり現場での工期短縮など効果が見込めますが、価格は高くなります。
アルミ額縁(アルミニウム製、AL製)
アルミ額縁は主に工場やガレージなど水で濡れたり、汚れたり、強度を必要とする場所で使用します。写真や図のような「形材」はスチール額縁より安価なため代わりに使用する事もあります。ただし通常、表面処理は陽極酸化複合皮膜であり、塗装ではないため傷ついた場合に補修が難しいです。
形材の場合、出幅はメーカーの規格のため10mm刻みなど制限があります。室内の壁とのチリは10mm程度となるように調整をします。チリが20mmを超えると危険なため注意してください。出幅が大きくなる場合は、アルミ曲物となりスチールより高価になりますが出幅は自由に決めることができます。形材でも曲物でも工場で着色するため現場での塗装はありません。
取付方法は、メーカーによりますが形材の嵌め合わせ+溶接でビスは見えない場合が多いです。
工事範囲は、形材ならサッシ工事です。曲物であれば金属工事でも良いですが、サッシとの色合わせには注意が必要です。
ステンレス額縁(SUS製)
ステンレス額縁は曲物で製作しますので、納まりはスチール額縁とほぼ同じです。
違いはスチールの場合は板厚1.6mm、ステンレスの場合は板厚1.5mmである点。ステンレスは、塗装しない点です。
価格は大きくアップしますので、金属工事で施工する場合が多いです。
樹脂製額縁
樹脂製の額縁を使用する事は基本的にはほとんどありません。住宅サッシの一部で樹脂額縁が商品ラインナップされている場合があり、浴室などで使用する事があります。
額縁の納まり事例
結露受け額縁
結露受け額縁は木額縁、スチール額縁、アルミ額縁どれでも対応が可能です。左の写真はアルミサッシに結露受けアングル+木額縁、右の写真はアルミサッシにスチール額縁です。右では結露水が溜まっているのが分かります、この額縁は結露受けの幅が100mmほどで、かなり大きく設計されています。結露受けに溜まった水は基本的に排水出来ないため、自然乾燥か拭き取りです。
左図は、簡易タイプの結露受けでアルミアングルに3mmの立ち上がりが付いており、室内側に結露水が流れるのを防ぎます。
中央の図は、20mm×20mm程度の結露受けがあり結露水をためることが出来ます。材質はアルミ形材のため形状はメーカーの規格で決まっています。サッシ下枠との間にシーリングを打ち結露水が壁裏に浸入しない納まりです。
右図は、結露受け付のスチール額縁です(溶接の絵は省略)。図では30mm×15mmの結露受けが付いていますが、曲物で形状は自由に変えることができます。好立地のオフィスなどシビアな検討が求められる場合、窓の結露量解析を行い結露受けの形状を決める現場もあります。
つぶし曲げ額縁、フラットバー額縁
内観をシャープに見せたい場合の納まり事例です
左図は、「つぶし曲げ額縁」「つぶし枠」です。スチール額縁の室内側につぶし曲げ加工をして見付は3.2mmとなります。つぶし曲げは「ヘミング加工」「あざ折り加工」とも呼ばれます。アルミでは材料が割れるため製作出来ません
右図は、「フラットバー額縁」です。アルミはつぶし曲げが出来ないため、3mmや5mmのフラットバーを額縁とします。スチールやステンレスでも製作は可能です。
額縁の結露防止対策
アルミサッシやスチールサッシのように熱を伝えやすいサッシの場合、額縁の結露防止対策として、サッシ枠と額縁の間に断熱ゴムを挟みます。完全に結露を抑えたい場合は、アルミ樹脂複合サッシや樹脂サッシを使用する必要がありますが、コストを抑えて簡易的な断熱効果が期待できます。左図のように曲物額縁の場合は製作誤差があるため、断熱ゴムを2~3mm程度面落ちさせると、ゴムがはみ出さず意匠性が向上します。
また、右図のように木額縁の場合、アングル事態を樹脂製に変更することもできます。また、サッシ工事で対応をせずフクビのサッシ見切2型などを使用する場合も多いです。
ペリカバー、ペリカウンター
オフィスビルなどペリメーターゾーンの窓の下額縁のこと。右写真のように空調が内蔵される場合もあります。スチール製が多く、空調やダクトが入る場合には取り外し可能な形状で、ボリュームも金額も大きくなるため金属工事の場合がほとんどです。
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