この記事では、改修工事でサッシを交換する方法の一種であるカバー工法について解説しています。
こんな方におすすめの記事です。
- 初めて改修工事を担当する若手の設計者、現場監督、施工図関連業務の方
- 若手のサッシ屋さん
納まり解説について
本記事でのポイントは以下の点です
- カバー工法の種類
- 施工図チェックのポイント解説
- 寸法は「一般的な参考数値」です。製作メーカーにより異なりますのでご注意ください
サッシ図に関する専門用語がわからない方や、図面の見方が不安な方はこちらを、お読みください
【完全保存版】サッシ図の基本|見方・読み方徹底解説
アルミサッシのカバー工法
標準納まり
まず、最も一般的なアルミサッシを使ったカバー工法を解説します。
既存サッシとカバー工法図面比較
左の引き違い窓を、右のFIX窓に改修する場合の比較図です。新設サッシはピンク色、取付下地は水色で示しています。
既存サッシの障子は撤去し既存枠は残し、上から被せるように新設サッシを取り付けるため「カバー工法」「かぶせ工法」と呼ばれます。
改修工事なので溶接せず、ビス止めで取付が一般的です。下地形状が複雑なこと、綿密な現調が必要なことから、溶接取付よりコストは高くなる傾向があります。エントランスなど溶接ができる時は、カバー工法でも溶接で納める場合はあります。
アルミサッシカバー工法の断面詳細図
アルミサッシカバー工法の標準納まり図です。使用する新設サッシはビル用サッシ(一般サッシ)のALC枠です。
ALC枠が分からない方はこちらをどうぞ 【解説】サッシ枠形状一覧|RC枠、ALC枠、同面枠、鉄骨枠の使い分け
- 新設サッシは既存サッシに比べW-70mm、H-65mm程度小さくなる(枠形状による)
- 取付下地はSt曲物ビス止め。外部正面からのビス止めは既存枠の肉厚が厚ければ既存枠補強材は不要
- 外部は既存躯体と新設サッシの間にシーリングを打設して止水
- 既存水切を隠す場合、大きな曲物で被せる。隠さない場合は小さな水切でOK
- 内部は既存額縁との間に小さな化粧カバーを取付、誤差吸収のため10mm程度シール目地を設ける
- 工事の段取りを重視しシールとガラスもサッシ工事とするとサッシ工事のみで完結できる
施工事例
カバー工法の特徴は、外観では既存水切りを覆う大きな曲物水切。内観では、既存額縁とサッシ枠の間に小さな化粧カバーです
特殊納まり事例
アルミ樹脂複合サッシのカバー工法
左図は、ビル用アルミ樹脂複合サッシを使ったカバー工法納まり詳細図です。基本はアルミサッシと似ていますが取付下地がヒートブリッジにならないために、既存枠の間に樹脂ライナーを挟みます
改修専用サッシ(ビル用サッシ・住宅用サッシ)
右図はカバー工法専用の商品で「改修サッシ」や「改修専用サッシ」などと呼ばれます。
- 各社のいろいろな形状の製品があるが、多くはマンションや集合住宅用の改修用の商品
- シール打設をなくすためにAT材納まりが採用されるケースがある
- 枠見付が薄く、ALC枠のカバー工法より開口が広い
- 専用製品のため、窓種が少ない
- 使用できる既存枠に制限があったり、納まりを変えることができないデメリット
住宅用サッシでも、アルミ樹脂複合サッシの改修サッシがあります。ビル用同様に専用納まり色々な制限があり、納まりの自由はききません。形状はメーカーによるため各社カタログをご確認ください。
SD(鋼製建具)のカバー工法
SDが分からない方はこちらをどうぞ【完全保存版】SD(スチールドア)の基礎知識
マンションや集合集宅では玄関SDのカバー工法がよく採用されています。
左は既存のドア納まりで、扉を撤去し枠は残します。右のピンクは新設ドア、水色が取付下地です。新設枠は、15mm外部側に持ち出して取付け、既存躯体との間にシールを打設します。新設枠の室内側は潰し加工をすることで、サッシWは既存W-20mmとなりかなり広く取ることができます。内部の仕上げ処理は、既存枠との間でシール打設ですが、既存枠を完全に隠す場合St曲物で小さなカバー材を取付る場合もあります
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