サッシ周りにモルタルを詰める「トロ詰め(充填)」はRC(鉄筋コンクリート)造やS造のALC外壁において、サッシの性能を発揮させる重要な工程です。
実務者向けに、その理由と失敗しないための注意点を簡潔にまとめました。
サッシ枠と外壁を鉄筋で溶接で固定しただけでは、数センチの隙間が残ります。この隙間にモルタルを隙間なく充填する作業を「トロ詰め」と呼びます。
トロ詰めの手順については【解説】サッシ周りモルタル「トロ詰め」の手順と注意点
なぜモルタルを詰めるのか?(3つの主な理由)

固定強度の確保と一体化
サッシはピッチ500mm以下でアンカー溶接することで固定されていますが、それだけでは巨大なガラス重量や、外部からの風圧を支えることはできません。モルタル充填でサッシ枠と外壁が一体化し、ガタつきや歪みを防ぐ強固な支持構造となります。
モルタル充填が不十分で、台風時にサッシ枠の溶接が外れたり、掃き出し窓で人がよく踏む場所で下枠が歪んだりする不具合事例も報告されています。
防水性能・気密性能の維持
RC造の場合、サッシ枠周りは「防水モルタル+シーリング」の二重が基本です。モルタルが不十分だと、外壁のクラックやシーリングの劣化時に雨水が侵入し漏水のリスクが高くなります。また、隙間を埋めることで隙間風を防ぎ、気密性能を担保します。
防音・防火性能の向上
サッシ枠はアルミやスチールでできています。枠周辺に高密度のモルタルが詰まることで、音の漏れや振動を抑え遮音効果が高まります。また、防火設備(防火窓など)では、枠回りに不燃材を充填することが義務付けられているため、RC造ではモルタル充填が必須dす。S造や木造でモルタル充填が出来ない場合はロックウール等を充填します。
トロ詰め作業の注意点(トラブルを防ぐポイント)
トロ詰めは左官工事ですが、サッシの取付精度に直結するため、建具工との連携が必要です。
枠の「はらみ」防止
とくにアルミ製の薄い肉厚のサッシ周りにモルタルを充填する際の充填の圧力で、枠が内側に膨らんでしまう「はらみ」が起こることがあります。引違い窓や開き窓では閉鎖時の気密にや開閉の動作に影響が出る場合もあります。
対策: 垂直を確認すること。必要に応じてつっぱり棒を枠内にかけ、硬化するまで外さないようにします。
沓摺の「先詰め」
ドアの沓摺や掃き出し窓の下枠は人が頻繁に踏むため、枠の裏側にしっかりモルタルが充填される事が重要になります。しかし、サッシ取付後に奥まで流し込むことが難しい問題があります。
対策: 取付前に裏側にモルタルを詰めておく(先詰め)が標準的な施工手順です。サッシやドアを上下反転し、壁に立て掛け上からしっかりモルタル充填を行います。
トロ詰めが必要な外壁・トロ詰めNGの外壁
左がALC外壁の平面標準納まり図、右がECPの平面標準納まり図です。

- トロ詰めが必要:RC壁やALC外壁
- トロ詰めNG:ECP外壁やサイディング外壁、木造など
トロ詰めが出来る場合は、鉄筋棒で溶接が標準的ですが、トロ詰めが出来ない場合はモルタルによる固定強度がないため、溶接長さを確保するために、アングルを使用したり、溶接ピッチを増やすなどの対応が必要です。また防火設備の場合もモルタルは使用できないので、ロックウール等別の不燃材を枠の隙間に充填します。
ECPでモルタル充填が不可の理由は「ECPの日常の挙動が拘束され不具合が発生する場合があるため」とECPメーカーのカタログに記載がされています。ALCも同様にロッキング構法の場合などの挙動を懸念して、モルタルを充填しないケースも希にあります。
ECPの納まり詳細は【納まり事例集】サッシECP納まり|標準図のポイント
特殊なサッシ(断熱サッシなど)のモルタル充填
断熱サッシには、枠の中央付近に断熱材(図のピンク色部)が組み込まれている製品があります。その場合、枠の断熱材より外側にのみモルタルを充填します。通常のサッシと同じように施工するとモルタルがヒートブリッジとなり結露の原因となります。
断熱サッシも多様で、室内側に樹脂の化粧カバーが付いただけの製品、枠自体が樹脂の製品などあるため、仕様とサッシ図をよく確認する必要があります。

四方トロ詰めは必要か
冒頭でも書いた通り、トロ詰めはアンカー溶接の強度補強的な意味も持っているため、四方全て充填が必要です。稀に人が出入りする時に踏みつける下部のみ行えばよいと勘違いされている場合がありますので、注意が必要です。

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