【解説】曲げ加工って何?曲物の設計のポイント

アイキャッチ-曲げ加工とは?曲物とは?

曲げ加工についての基礎知識、曲げ加工の種類、建築でよく使用する曲物(まげもの)の設計のポイントなどを詳しく解説をします。

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曲げ加工とは?

【Q&A】曲げ加工、曲物とは?-曲げ加工解説

曲げ加工(ベンディング加工)とは

曲げ加工とは、金属板や板金を曲げることで、複雑な形状の部品や部材を製作できる加工方法で「ベンディング加工」とも呼ばれます。プレス加工の一種で、様々な加工の種類があり、工業的にいろいろな場面で利用されています。上図は、一番代表的な型曲げと呼ばれる種類で、ダイと呼ばれる下型の上に金属板をセットし、パンチ(上型)でプレスし材料に曲げを加えます。

建材で使用する曲物の用途

外壁材や屋根、内装材のパネル、スチールドア、ステンレス製サッシ、サッシ額縁、配管やダクト、手すりや階段など、多くの用途で使用されています。
曲物額縁の事例はこちらをどうぞ【解説】サッシの額縁|種類と設計のポイント
スチールドアについてはこちらをどうぞ【完全保存版】SD(スチールドア)の基礎知識

曲げ加工の種類

建築で使用する曲物を設計する上で、最低限知っておきたい曲げ加工の種類です

型曲げ(V曲げ)

ダイ(下型)と呼ばれる金型の上に金属板をセットし、パンチ(上型)でプレスし材料をV字型に曲げます。

右図はV曲げの中でも「ボトミングベンド」と呼ばれ、パンチをダイの底まで押し込む加工です。

逆に、底まで押し込まずに途中で止めて自由な角度で製作することを「パーシャルベンディング」と呼びます。

曲げ加工、曲物とは?-型曲げ・V曲げ

角出し曲げ、シカル曲げ(プレーナー加工)

「角出し曲げ」は「シカル曲げ」とも呼ばれ、金属板にV溝を掘る「プレーナー加工(シカル加工)」を施したあとに曲げる加工方法です。外Rが小さくなり曲物の仕上りがシャープになります。外Rが小さくなる事で金属板の伸びが小さくなり、表面が白く濁ることを防げます。但し、普通曲げに比べて価格は上がり、強度は弱くなります。

例えば、板厚1.5mmのステンレス板であれば、「普通曲げ」は外Rは約2.5、「角出し曲げ」だと外Rは約1.0~2.0となります。プレーナー加工はV溝が深く外Rが小さい順にA角、B角、C角と分類されます。建具で使用されるのはB角が一般的です。

建築での使用事例は、装飾性の高い金物や、ステンレス製建具などです。意匠性の高いステンレス製建具は標準的に角出し曲げをします。強度の必要な枠は、公共建築工事標準仕様に従い裏に補強材を入れます。また、スチールでも角出し曲げは可能ですが、そもそも価格を抑える目的で採用されることが多いSDなどでの採用は少ないです。

曲げ加工、曲物とは?-シカル曲げ、角出し曲げ

同義語:「Vカット曲げ」「ピン角曲げ」「角曲げ」

ヘミング曲げ、つぶし曲げ

「ヘミング曲げ」「ヘミング加工」は「つぶし曲げ」とも呼ばれるように、金属板を潰して、180度折り込む加工方法です。製品の縁を丸くし、切断面で手を切らないように安全性を高める効果があります。

また、見栄えが良くなるため、建具などではシャープな見切材を製作する場合にもよく使用されます。

アルミは1mm程度の薄い材料であれば、ヘミング曲げが可能ですが、建築で良く使用される2mm以上の板厚では曲げ部が割れてしまうため、製作出来ないとされています。

曲げ加工、曲物とは?-ヘミング曲げ、プレーナー加工

曲物の設計のポイント

曲げ加工最小寸法表

曲げ加工を行う時は、ある程度の寸法が無いと曲げることが出来ません。図は加工に必要な寸法を示す表です。

例)L曲げの場合、板厚0.8mmのスチール(St)では、A寸法は5mm以上必要

注意)本表は、工場や使用する加工設備により異なりますので、参考程度としてください。2社にヒアリングした寸法の平均値を表にしたものです

曲げ加工、曲物とは?-曲げ加工最小寸法表

リターンベンド限界グラフ

図のようにコの字に曲げる場合、曲げ返した部分がパンチに干渉する寸法があります。この寸法では製作できないとわかりますが、これをグラフで確認できるのが「リターンベンド限界グラフ」と呼ばれるものです。

ただし、製作工場で保有している金型や加工設備もわからないため、通常の建築設計業務で読み方は分からなくても良いと思います。作りたい形状を製作業者に伝えて確認してもらえば良いでしょう。また、寸法的には曲がらなくても、見えない部分で分割して製作するなど、良い案を出してくれるかもしれません。

曲げ加工、曲物とは?-リターンベンド限界グラフ

最大製作長さについて

通常、曲物の最大製作長さは約4000mmですが、特殊な加工設備を持つ工場で6m~8mの曲物が製作できるところもあります。但し、非常に価格が高くなります。また、板厚が厚い場合は製作可能な長さが短くなります。

結論は、製作業者の加工設備により寸法が異なりますので、施工図設計段階で業者へ確認することをオススメします。

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